「容れ物」の大切さ

またまたお久しぶりになってしまいました、皆さまお元気でお過ごしでしょうか?

今年の夏は、日本人を殺しにかかってきてるんじゃないかと思うほど異常に暑かったですね~

周知のとおり私は中医学を勉強しておりますが、中医学的に夏と冬どちらが身体に厳しいかと聞かれたら、迷わず夏だ、と答えます。

冬は寒いですが、着込めばなんとかなります。

夏はどれだけ裸になっても、それ以上は脱げません。

「汗血同源論」と言って、私たちは、血と汗は同じもの、と考えます。(これは現代医学でも同様に言うようです。)

血は体にとって大事なガソリン、大量に汗を流すことはすなわち、体にとって大事なガソリンがダダ漏れになってしまうことであり、どんなに工夫しても汗をかいてしまう夏は、どうしても体力を奪われてしまうのです。

それで夏の終わりには夏バテになり、秋に移行する季節の変わり目はたくさんの人が体調を崩します。

今年のこの異常な暑さが今頃の体調不良を大量に生み出している一因であり、それによる免疫の低下が季節外れの学級閉鎖を生み出しているのではと勘ぐっております。

(ちなみにエアコンの中にいればいいかと言うと、エアコンは足ばかり冷やすので頭寒足熱の逆の状態になりやすく、また外へ出るとその温度差で余計に多く汗をかいてしまうので、やはり体力を消耗していきます。)

 

西原式育児13年目の長男様。

そろそろ育児というには無理のあるお年頃になってきましたが、西原式で育った子どもがどのような思春期を迎えるのか、というところも皆さんにとって関心のあるところではないでしょうか。

うちの長男は成長が速い方ではないので、まだ体も小さめで声も高くて毛も生えてきておりません(笑)今度の合唱祭ではソプラノを歌うそうだ…お前は米良美一か。

ですが頭も口も発達してきて、中学生特有の小生意気さはちらほら見えてくるようになりました。

時々私と小競り合いはやりますが、今のところ理不尽に暴れたり反抗したり、ということはないです。

 

ないですが。

最近、「容れ物のクオリティってこれほど大事なんだなあ」ということをしみじみ実感する出来事がありました。

今までほとんど大きな病気をしてこなかった長男ですが、2学期に入ったころ、初めて大きく体調を崩しました。

中学生になり生活も変わり、初めての部活やテストなど慣れない中学生生活が始まり、体力がひっ迫していたんだと思います。

昔からアクセルしかない性格の長男は加減というものを知らず、それがプラスであろうとマイナスであろうとなんでも全力でぶち当たっていきます。

あまりにも部活が楽しすぎてのめり込み、さらに生徒会なんかにも手を出し、テスト前に先生が1日4時間勉強しろと言ったら大真面目に真に受けて怒りまくる。

「ママ!ママの時は1日4時間も勉強したの?!」

「したよ~、ただし、本当に勉強したのは30分くらいだけどねw」

というわけで、先生が何を言おうとうちでは勉強の上限時間は1日1時間ですww

長くやってもどうせ身にならんというのは私が自分の人生で人体実験したもんね。

それより若い頃の睡眠時間の確保の方が長い人生どれだけ大切かって話で。

 

加えてこの夏の異常な厳しさで、体力もジリ貧に。

2学期に入ったくらいから、なんかいやにハイテンションだな?と思ってました。

毎日感情の起伏が激しく、やけに動き回っていて、エンジンが空回りしているというか、冗談で、「アンタ注射でも一本打って来れば?」と言ってたくらい。

 

「陰極まれば陽に転じる」「陽極まれば陰に転じる」

これを陰陽転化、と言います。

なんでも物事は極限までいくと、その反対に一気に振れるという、この世の法則です。

体力の限界で体の材料を使い果たしてしまい、陽の気が極限まで高まっていた長男は、ある時一気に陰に転じ、内臓が動かなくなってしまったんですね。

車に例えればラジエーターの水が枯渇してエンジンがオーバーヒートして止まってしまったような状態。

消化器(胃・小腸・大腸)が一気にダウン、15分毎の水下痢と強い腹痛が2週間も続きました。

消化システムという工場が稼働を停止するとどうなるかというと、口からお尻までのホースに水を流せば、どこにも引っかからずそのままジャバジャバ出てきます。

そういう水下痢。

ウイルス的なものも疑って、症状が始まった早いうちに、実に数年ぶりに小児科を受診しましたが、レントゲンも炎症反応も正常で、お医者様も「…夏の疲れの胃腸炎ですかねえ」と。

こんな風に体調を崩された経験がなく、ここまで手だてがないのも初めてだったので、正直死んじゃうんじゃないかとすら思いました。

中医学的には、腎に入っている「命門の火」が陰陽転化で消えてしまい、三焦という消化器全般がシャットダウンしてしまった状態でした。

再点火する手段があって本当に良かった…まだ若いからバックアップ電源も稼働しただろうしね。

自分で動かすにはコウケントーが一番効きました。ビバコウケントー!

 

最初のキッカケは、学校が終わってから家族でショッピングセンターへ行った時、車の中のエアコンで風邪をこじらせたんでしょう。

目的地に着いた時、彼は恐ろしく機嫌が悪くなっていました。

なんと、歩きながらその辺の看板にパンチを食らわせたり、フードコートのイスにわざと突っ込んでいって悪態をついたり。

物に当たるとか!こんなに機嫌が悪い長男は初めて見ました。これがウワサの積み木くずしか!?←古い

これは肝が燃えている!とその場で薬局に走って漢方(抑肝散)を買って飲ませ、肝が落ち着いたら今度はしくしく泣きだしてもう、暴走止まらず~

その夜から上記の体調不良で地獄の日々が始まったわけですが、この時のこの暴走を、本人は一切覚えていないのです!

肝火上炎で一気に燃えあがり、心臓に火か入ったのでしょう、こういう時は記憶が飛ぶので嘘でなく本当に本人は覚えていないのです…難しくてごめんなさい、興味ある方は是非、拙講座「はじめての中医学」をマイルドに宣伝♡

 

いや、そういう小難しいことが言いたいんじゃなくて。

私はこの時、肉体という「容れ物」の状態が、人格にここまで影響するんだ、ということを目の当たりにしたんですね。

中医学では、臓器の状態と感情は密接に関係している、と説きます。

陰陽平和、といって、この臓器の状態が理想的であれば、性格も非常に温和である、とされます。

体に不調のない子は育てやすい、これは西原式育児の大原則ですが、物に当たったり暴れたり、ということを一切したことがなかったこの子が、体調を崩してここまで人格が豹変するという、奇しくもここにきて中医学と西原式の共通点を体感してしまったのです。

 

逆に言えば。

幼児期にイヤイヤで手が付けられなかったり、思春期に暴れたり引きこもったり、というのは、こういう、自分ではどうにもならない制御不能な気持ち悪さがキッカケになっている可能性も大いにある、ということです。

誰でも体調が悪いときは「いつもの私」でいられない。

今回のうちの長男のように、肝火が心臓に入れば、記憶が飛んで、自分のやったことや言動を覚えていない、ということも十分に考えられる。

その辛さをわかってあげられれば、待つ、ということや、不問にする、ということもできますが、感覚というのは非常に主観的なものなのなので、周りの人間には、当人がなぜ暴れているのか、なぜ暴言を吐くのか、全くわからなくて右往左往したり強力に支配したり抑圧しようとする。

どっちの立場にとっても「わかってもらえない」という悲劇が、積み木くずしや学校崩壊という現象として現れても仕方がないように感じます。

この世界は意識が創っているので、意識が変わればもちろん見える世界も変わるのですが、肉体側からのアプローチでもある程度やれることはある。

中学になると先生方の子どもに対する対応も変わるので、子どもたちもその環境の変化に戸惑ったり思った以上に体力を消耗したり、ということはあるでしょう。

思い返せば、幼稚園でも小学校でも、入園入学してしばらくは、入院レベルで盛大に体調崩す子が何人かいました。

成長が追い付いて体力が復活してくれば戻ることもできますが、毎日意味を感じられないことを繰り返すのは大人でも我慢が必要なことですから、そのまましんどさに負けることもあるでしょう。

一概にその子を否定したり根性を振りかざすよりは、「戻って来られる」環境を整え、「聴いてあげる」ことなのかなあ、と思いました。

私たち人間は、「片方の目」でしか見ることができないから、自分の価値観やこだわりだけで他人を断罪しがちだけど。

だって本人だって一生懸命戦っているんだもんね。

 

長男はこの一件をようやく乗り越えましたが、瘀血による体の痛みがまだあちこちに残っているようです。

まあね、あれだけ「陰」を絞り出しちゃったんだから仕方ないかな、あとは自力で頑張ってくれたまえ。

病気をすると一回り成長すると言いますが、禍いも決して無駄ではなく、意味があって起こってくる。

成長したのかな、やっと新しい生活にもこなれてきたように見受けられます。

ただし、中学になると色々と理不尽なことに気が付くようになるので(笑)、無駄に怒りだした時には引きずらないように「抑肝散」が活躍しています。

しゅ~って鎮火するから、思春期にわりとおススメな漢方ですw

 

ちなみに。

騒動が収まって少しして、同じ症状を威力1/3くらいで今度は次男がやりましたww

幼稚園通して無敗だったこの人が1週間も学校を休んで、同級生を大変に驚かせておりました。

(先生へのメールに「鬼の霍乱」って書いたら副校長先生レベルまで知れ渡ってしまった…)

長男でシミュレーションできてたから、動揺もせず無駄なこともせずにひたすらコウケントーだけで乗り切りましたよと。

結論・やっぱりあってよかったコウケントー(笑)

 

↓病気療養中にヒマで作った長男作のオリジナルレゴバイク。ちゃんとラジコンだったり。中学になってもこの人のレゴ熱はまだまだ健在ですわ。

というわけで、皆さまも暑すぎる夏と季節の変わり目にはお気をつけてくださいませ。

ではまた~!